キャスト対談
第二回 小澤亜李×上田麗奈



第2回は、ファルザ役の小澤亜李さんと、謎の少女・アリス役の上田麗奈さんが登場。
2人ともセリフにならない声でキャラクターを表現する難しい役を演じていますが、
収録時にはいったいどんなエピソードが? 
他にも気になるキャラクターや設定など、作品についての多彩な話題を語ってくれました。
■ファルザの「ファー」には、意外な心の声が込められていた!?
――お2人が演じているキャラクターについて、ご説明ください。
小澤さん:ファルザは動物で、一応、女の子なんです。
     でも気性が荒く感情のメリハリが強いので、女の子のなかでも勇ましいほうだと思います。

     それからファルザは、リックのことを自分より格下だと思っているんです(笑)。
     ファルザは「ファー」としか言わないんですけど、実はけっこう口が悪いんですよ。

――台本には「ファー」というセリフの横に、カッコでくくられてファルザの気持ちが書いてあるそうですね。
小澤さん:そうなんです。それでリックに対してはいつも、
     (このクズが!)という気持ちで「ファー」と言っていて(笑)。
     逆にイドのことは崇拝していて、
     (マイ・ダーリン♪)って感じの声で話しかけているんです。

――なるほど、そうなんですね。では、謎の少女であるアリスは?
上田さん:アリスはとても謎多き少女で、オリハルトの中から生まれたのか、
     それともずっとその中にいただけなのか、そもそも人間なのかすら怪しいんですけど。

     とりあえずアリスは3歳児ぐらいの年齢で、言葉をしゃべることができなくて、
     「あー!」という言葉と笑い声で、コミュニケーションを取っています。
     基本的にはすごく明るく天真爛漫で、人懐っこくて、いろんなものに対しても
     恐れることなく(わぁ楽しい!)(あそぼ、あそぼ)って思っている女の子ですね。


――お2人はどちらも、言葉にならない声で感情を表現するキャラクターを演じているわけですが、
こういったキャラクターをこれまでに演じたことはありますか?

小澤さん:実は私は、谷口監督の作品に初めて出演したのが、猫のキャラクターだったんです。
     と言ってもその時は、あまり本物の猫っぽくないファンタジックな猫でしたけど。
     その役で何かを感じていただけたのか、谷口監督の作品は今回で3作品目ですが、
     どれもへんてこなキャラで(笑)。

     ファルザに関しては、谷口監督から最初に「ふだんの小澤さんでいいんで」
     と言われましたが、「いやいや、ちょっと待ってください」と
     ツッコミそうになりました(笑)。

     ファルザは言葉こそ話せないけど、しっかりとした感情のある動物なので、
     喜怒哀楽をはっきり出すようにしました。人間だともっと細かく、
     繊細に感情を表現すると思うんですけど、動物なのでひとつひとつの感情を
     ダイナミックに、大きめに出したほうがいいかなと。

――上田さんが演じられたアリスは、どうでしたか?
上田さん:アリスの場合はファルザとは逆に、台本にその時の気持ちが書かれていることは
     少ないんです。アリス自身がこう思っているというよりも、周りの環境や、
     周りの人が何をしているかという部分から、アリスの動きや声を作っていった感じですね。

     私は以前に、赤ちゃんの役を演じたことがあるんです。
     その時は0~1歳ぐらいのちっちゃい子だったんですが(アリスの)3歳ぐらいというのは、
     それとはまたちょっと違う部分がありますね。どこまで頭が働くんだろうとか、
     どこまで人の顔を認識できるんだろうとか、そういったところは難しかったポイントです。

     でもアリスは基本的に、(遊びたい!)(なんか楽しい!)という気持ちなので、
     自分が幸せだな、心地いいなと感じるように行動しようと思っていました。

■もし男だとしたら、アマンザさんとお付き合いしたい!
――エスカベイト社の社員にアマンザも加えた、現在ストゥルティー号に乗船しているメンバーの中で、特に仲よくなってみたいという人はいますか?
小澤さん:マヤとは仲よくなりたいなって思います。アリスに対する面倒見がすごくいいですし。
     頭はすごくいいのに操縦は下手だったりとか、ほどよいスキがあるので、
     相談しやすそうです(笑)。クレアはできる人すぎて、
     恥ずかしくて自分の悩みを言えないけれど、マヤになら相談できるかな。

上田さん:私はアマンザさんと付き合いたいですね。男性として(笑)。

小澤さん:ああいう女性がいいの?

上田さん:自分がもし男性だったらね。「いい女だなぁ」と思うんじゃないかなぁ。

小澤さん:今はまだ“できる女”感が強いけど、後半はさらにかわいくなるよね、アマンザさん。

上田さん:私が男性だったら恋人に対して、甘えられないけど甘えたい、
     みたいな部分がすごく魅力的に感じると思います。


小澤さん:ああ見えて意外と、プライベートではやわらかい感じなのかもね。やだ~、萌える~!!(笑)

――この話題が、まさかガールズトークになるとは思っていませんでした(笑)。
上田さん:それと、ファルザにも懐いてもらいたいなぁ。「よしよしよ~し!」ってしてみたい。

小澤さん:(笑)。

――ではお2人から見て、イドというキャラクターはどのような印象ですか?
上田さん:あまり生きている感じがしないというか、ロボットに近い感じですね。
     わかりやすく状況を説明してくれたり、優しくしてくれたりはするんですけど、
     イド本人がそうしたいと思って動いているのではなく、
     “こういう状況だから自分はこう動いたほうがいい”という感じでやっているのかなと。

     だから、もし私がマヤみたいなポジションだったら、不安になると思うんです。
     イドから人としての温もりが感じられなくて。
     でも今の段階でも、悪い人じゃないんだろうな、とは思いますね。


小澤さん:イドは、他の人との距離がすごくあるので、最初は寂しい人だなって感じていました。
     他人へのガードが堅いと言うか、人とのなれ合いを好まないように思いました。
     だから、すぐ死んじゃいそうな危なっかしさがあります。

     でも、マヤやリックみたいに押しの強い人たちがイドの心に踏み込んでいくことで、
     彼もだんだんと受け入れてくれるんですよ。
     だんだんと表情がほころびだした気がするので、ホントは優しい人だと思うんです。
     「仲間だよ」という思いを伝え続けていると、ちゃんとイドもわかってくれる。
     そういう変化が見えると、嬉しくなってきますね。

上田さん:亜李ちゃんみたいな人だと、イドとも仲よくなれるんだろうなって思います。

小澤さん:なれるかなぁ?(笑)
     さすがに拒絶されたら、私はもうそこから先にはいけない気がするので、
     そう考えるとリックは強いなって思いますね。

■小澤さんがいちばん難しかった「ファー」は?
――第1回のインタビューで、ミクリ・マヤ役の津田美波さんとイド役の興津和幸さんにお話を伺ったのですが。
実はその際、小澤さんと上田さんへの質問をいただきました。
まずはイド役の興津さんから、「大変でしたね」とお伝えくださいとのことです。

小澤さん:どうもありがとうございます!(笑) 
     でも、興津さんたち人間の皆さんは、本当に言いづらいセリフが多そうだったので、
     そちらも大変だったと思います。

     序盤の収録で、「くっさくさぎょう(掘削作業)」というセリフをみんなで
     言いづらそうにしていたので、
     同じセリフで苦しむなんて、やっぱりチームなんだなと思っていました。

――では改めて、津田さんと興津さんからの質問なのですが、「あー」とか「ファー」といったセリフを、
自宅でどうやって練習されたのですか? 家族や近所の人から変な顔をされたりしませんでしたか? とのことです。

小澤さん:私は普通に練習していましたね。「ファー」って別に、ゴルフでも言いますから(笑)。
     それよりは「やめて!」「助けて!」と叫ぶセリフのほうが、
     もっと大変なことになりそうな気がします。

上田さん:私もあまり気にしていませんでしたね。
     アリス以外の役でも、大きな声で練習しているので。


小澤さん:アリスの場合は笑い声だから、きっと近所の人も「楽しいご家庭なのね」と
     思ってくれる気がします(笑)。

上田さん:そうそう。いつも笑ってるよ、って。

――続いてはお2人から、小澤さんへの質問です。
小澤さんがいちばん好きな「ファー」と、いちばん大変だった「ファー」はどれですか?

小澤さん:ファルザがリックに対して、
     心から冷たくさげすんでいる「ファー」が好きなんです(笑)。
     だいたい1話につき1回は、リックのことをさげすんでいるんですけど。

     いちばん大変だったのは、ファルザの「ファー」でその回が終わるという
     “ファー締め”があったんですよ。しかも、視聴者の方が「いい話だったなぁ」と
     思うような「ファー」で締めてください、と言われて(笑)。
     それはすごく難しかったですね。

上田さん:でも毎回、どれも全部違う「ファー」だったから、おもしろかったですよ。
     困惑しているファルザもかわいかったですよね。


小澤さん:そうなんですよ。「ファー」だけじゃなくて、他にもいろいろあるんです。
     「キューン」とか「パミュ~」とか。

上田さん:困惑するファルザは後半の回で出てくるので、ぜひ見てほしいですね。

■これから後半に向けて、いかにも怪しい“仮面の男”に注目してください! 
――『ID-0』では、Iマシンに自分の意識をトランスさせて操縦したりといった、非常にSF的な設定が
いくつも登場していますが、特におもしろいと感じた設定や、逆に難しくてよくわからない設定などはありますか?

小澤さん:「この単語はどういう意味なの?」と悩むことはありました。
     「ミゲルネットってなんだろう?」とか。
     作品世界の専門用語を、キャラクターたちは当たり前に使っているんですけど、
     私たちはセリフの流れから感じ取るしかなかったので、そこは難しかったですね。
     回を追うごとに、少しずつわかってくるんですけど。

     ファルザに関して言うと、動物なのにそれが意思を持って、
     Iマシンにトランスして動き回れるというのが、やっぱりおもしろいですよね。
     「人間だけじゃないんだ!」って。

上田さん:私がいちばんおもしろかった設定は……もっと先の回に出てくるので、
     まだ言えないんですけど(笑)。第5話までに出てきたところだと、
     天体が砂みたいになって、どこにでも入ってきたりするのは、
     なんだかすごくカッコイイですよね。
     あまりにも強い存在で、勝てないんじゃないかって思いました。


――作品もいよいよ中盤にさしかかってきましたが、ここから先の展開で、ぜひ注目してほしいポイントを教えてください。
小澤さん:なんといっても子安武人さんの演じている仮面の男ですね。
     あのいかにも怪しそうなアイツが、実はすごくおもしろい(?)人なんですよ(笑)。
     皆さんの予想を裏切る展開になるかもしれません。

上田さん:私としてはやっぱり、アリスが何者なのか、
     イドとはどういう関係があるのか……そこに注目してもらいたいですね。
     アリスも謎ですけど、イドも過去の記憶がなく、
     自分自身でも何者なのかわからないところが、
     この作品の大事なポイントになっているので。


小澤さん:まだ語られていないところを考える、楽しみのある作品ですよね。

上田さん:最後の最後まで、本当に謎の答えがわからないので、
     考える時間がすごくたくさんあると思います。
     登場人物ひとりひとりの過去だとか、それぞれが望んでいるものだとか、
     そういったところに注目して掘り下げていってもらえれば、
     いろんなことが見えてくるかもしれません。
     「人の思惑って、やっぱり人それぞれにあるんだなぁ」と思いました。


小澤さん:たしかにそうですね。何も考えていない人って、この作品にはいないんですよ。

■熱いハートをフィーリングで感じ取ってください!
――では最後に、これからの放送を楽しみにしているファンの皆さんに、メッセージをお願いします。
小澤さん:『ID-0』は最新の3DCGで作られている作品ですけど、
     どこか懐かしい大人の“熱さ”があって、
     私自身も久々にこんな感覚を味わえたと思える作品になっています。
     昔のアニメが大好きだった大人の方でも、
     いろんな謎や人間ドラマに引き込まれる感覚を味わえる作品ですので、
     ぜひお楽しみください。よろしくお願いします! 

上田さん:難しい単語もいっぱい出てくるんですけど、そういった言葉はわからなくても、
     人間どうしが熱いハートでぶつかり合っているのが感じられる、
     そんな作品になっています。

     作品の公式サイトに「人間とは何か」と書かれているんですけど、
     そのことをあまり難しく考えたり、構えて見たりしなくても、
     演出や皆さんのお芝居を通してフィーリングで感じ取れるところがたくさんあるんです。
     なので、どちらかと言えば気楽な気持ちで、引き続き見ていただければと思います。

     よろしくお願いします!

      ――ありがとうございました。