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キャスト対談
第三回 松風雅也×皆川純子



第3回は、リック・エイヤー役の松風雅也さんと、
アマンザ・ボルチコワ役の皆川純子さんによる対談をお届けします。
ハイテンションで女好きのリックは、クールな軍人のアマンザにアタックしては
冷たくあしらわれるのを繰り返していましたが、第9話ではなんだか2人が良い雰囲気に……!?

そんな2人を演じる松風さんと皆川さんは、アフレコスタジオでも隣同士に座っていたとのことで、
この対談でも息の合ったコンビネーションを披露してくれました。
■松風さん本人もリックと同じくスピード好き!?
――かなり放送も進んできましたが、お2人が演じているキャラクターについて、改めてご説明ください。
松風さん:リックはエスカベイト社の社員なんですが、もともとは“アステロイド・スピード”という、
     マシンにマインドトランスして競争するスピードレースのレーサーだったんです。
     ところがそのレースで大事故が起こって、死んだと判定されたために、
     実際の肉体を処理されてしまったんですね。

     そのためにリックは、肉体を持たずにIマシンにずっとマインドトランスしたままの
     “エバートランサー”になっているんです。リックはもともと、
     危険なスピードレースに挑戦して生きていることを実感するのが
     好きなタイプの人間だったので、命がけで掘削していくエスカベイト社にも、
     とても前向きに参加しているキャラクターです。

――ちなみに松風さんご自身は、スピードへの興味はありますか?
松風さん:僕は小学生の時からポケバイに乗っていたので、スピード系は大好きなんですよ。
     だから、違和感なく役に入ることができましたね。

――続いて皆川さんにもお聞きします。アマンザについてお話しいただけますか?
皆川さん:アマンザは惑星連盟軍の中尉という軍人で、
     最初は違法掘削のエスカベイト社を捕まえようとしていたんです。
     ところがそこで、隕石らしきものがミゲルジャンプしてきた騒動に巻き込まれてしまって、
     軍と離れることになって、エスカベイト社の皆さんに助けてもらったんです。

     でもアマンザ本人は、もともと違法掘削者を捕まえに来た立場ですから、
     最初はみんなをぜんぜん認めないんです。
     助けてもらったくせに、すごく上から目線で感じの悪い中尉殿ですよね(笑)。


――そんなアマンザも、エスカベイト社のメンバーと少しずつ打ち解けていきました。
皆川さん:エスカベイト社の人たちは違法なことをしているけれど、
     みんな悪い人間ではないというのがわかってきて。その一方でアマンザ自身も、
     それまでは軍で命令されたとおりに動くことしか知らなかった人間だったんですが、
     エスカベイト社の人たちと接することで、他人を思う気持ちといった、
     今までの彼女にはなかった部分が芽生えていくんですね。
     
■朝10時の収録で、ハイテンションなリックを演じるのは大変だった!?
――ご自身の役を演じるにあたって、特に苦労した点は?
松風さん:収録が毎週朝10時からスタートで、それがいちばん苦労しましたね。

皆川さん:そこなの~!?(笑)

松風さん:これまではずっと生放送の仕事があったので、
     朝10時スタートの収録は5年ぐらいなかったんですよ。
     だから久々だった上に、リックはどのキャラよりもテンションの高い役じゃないですか。
     しかも谷口悟朗監督からは、「フル3Dなので絵にはあまりとらわれず、
     皆さんの演技で画面を引っ張っていってください」という指示があって。

     アニメーションの収録は普通、まずテストをみんなでやって、次に本番をやるんです。
     でも谷口監督は、「テストの時からやりすぎっていうぐらいやっちゃってください。
     それで良かったら、そのまま採用します」というやり方なんですね。
     だからリックは、テストの1回目から120パーセントぐらいで叫んで、
     それで「やりすぎ」って言われたら、
     100パーセントぐらいに落とすというっていう演じ方をしていたんですね。
     だからテンションのコントロールが、すごく大変でしたね。

皆川さん:しかも朝10時からね。みんな淡々としているなかで1人だけ叫んでましたよね。

松風さん:そうやってがんばっているのに、ファルザにはとんでもない悪口を言われるし。

皆川さん:ファルザのセリフは、ぜひ字幕をつけてほしいですよね(笑)。

――キャスト対談の第2回でも話題になっていましたが、ファルザはリックに対して、かなりの毒舌だったそうですね。
松風さん:こっちはものすごくテンションを上げてやっているのに、
     「うるせぇ、この○○が!」みたいに言われて。
     ファルザ役の小澤亜李さんは「ふぁー!」としか言ってないんですけど、
     僕の持っている台本には、どんな意味なのかが書かれていますから。

皆川さん:亜李ちゃんもそのつもりで言っているだろうし(笑)。
     私は収録の時、松風さんの隣だったんですけど、
     「俺こんなことを言われる必要あるの? ヒドくない?」って、ヘコんでましたよね。


松風さん:しかも後半になればなるほど、ファルザの悪口がどんどんひどくなっていって。
     今までの人生で言われたことがないような悪口を、ファルザにはさんざん言われましたよ。

皆川さん:スピードスターで、赤い機体で、カッコイイのにねぇ。
     そんなリックがファルザには嫌われているから、おもしろいんですけど(笑)。


松風さん:アマンザも最初は冷たかったですよ。

皆川さん:私が苦労したのはそこなんです。最初からすごく雰囲気のいい収録現場で、
     ほかのキャストの皆さんともすぐ打ち解けて、仲間として入り込みやすかったんです。
     でもそのせいで逆に、「アマンザがもう仲間になっている感じがします」って、
     何度もダメ出しされました。
     私がもう気を許してもいいかな、と思ってそれを声に乗せると、
     「まだダメ」って言われたりして。
     私自身はとにかく、早く仲間になりたかったんですけど(笑)。


松風さん:現場の空気が良かったですからね、本当に。
     「この時は大変だったよね」というトラブルの思い出が、
     この作品に関してはぜんぜんないんですよ。本当に1クールがあっという間でしたね。

皆川さん:寂しいよねぇ。

松風さん:あと、アマンザが人間の時には口パクがありますけど、
     僕はずっとロボットだから、口パクを無視できるんですよ(笑)。
     それでも普通は身体の動きに合わせたりするんですけど、
     3Dだからそれも声の演技に合わせて、あとから動きのほうを変えてくれるんです。
     こちらがおもしろく演じれば、それが採用されるというのは画期的でした。

皆川さん:役者をやっていて楽しいと思える仕事でしたね。

――そういった収録方法は、演じられる声優さんにとってやりやすいものですか?
皆川さん:楽しいですよね、お芝居の制限がなくなりますから。
     そのぶん役者としての実力を試されるというか、ハードルは上がるんですけど。


松風さん:そのバランスもちょうど良かったんでしょうね。
     キャストの皆さんがそれぞれ経験を積まれている上で、
     実力を思いっきり発揮できるわけですから。

■リックのような男性が現れたら、皆川さん自身も惹かれてしまう!?
――リックとアマンザの2人は、第9話でなんとなく良い雰囲気になってきましたが、松風さんと皆川さんご自身は、お互いのキャラクターについてどのように思われますか?
皆川さん:アマンザのリックに対する最初のセリフは「気安く見るな」だったんですけど、
     あれは衝撃的でしたね。


松風さん:「視線もダメなの!?」って、収録の時に言ってましたよね。

皆川さん:ほかの作品では見たこともないセリフだし、自分でも初めて言ったセリフだし。
     その一言でアマンザという人がよくわかりました。

     リックは本当に、アマンザから冷たくあしらわれるんですよ。
     触っては払われ、寄っていけば冷たい言葉であしらわれて。
     でもリック本人には、なんにも響いてないんです。これっぽっちも引かないし。


松風さん:台本を見て、皆川さんに「今週はツーアタックです」と言ってましたから。
     Aパートでアマンザにアタックして跳ね返されるんですけど、
     Bパートでまた行きますよって(笑)。

皆川さん:もし私の目の前にリックみたいな人がいたら、
     最初は「この人は何なんだろう!?」と思うでしょうし、
     ほとほと疲れるでしょうけど、最終的には惹かれると思うんですね。
     アマンザにとっても私にとっても、
     リックは自分にないものを持ち合わせている人間なので。
     だから最終的には惹かれざるを得ないだろうな、と。


――松風さんご自身から見たアマンザは?
松風さん:もし僕自身がアマンザにアタックするとしたら、リックとはかなり方法が違いますね。
     僕は繊細なタイプなので、30分でツーアタックとかはできないですよ(笑)。

皆川さん:あの世界では別に、30分間の出来事ではないと思いますけど(笑)。

松風さん:僕の場合は、仕事ができるアピールであったり、プレゼントを送ったりといった、
     もうちょっと姑息な手段を取るでしょうね(笑)。

皆川さん:それだとアマンザはなびかないんですよ。
     やっぱりリックみたいなアプローチなんですよね。


松風さん:だから僕は、アマンザとはバーに行けないと思います(笑)。

皆川さん:でも松風さんは最初から、「僕はこの2人がくっつくと思います」と言ってましたよね?

松風さん:リックとアマンザが出会った瞬間に「これ、2人の結婚式があるな」と思っていましたから。

――えっ!? そうなんですか?
皆川さん:それは最後まで見ていただければわかるかな。
     でも、リックには肉体がないじゃないですか。
     そんなリックとアマンザの恋愛関係は、どうやって成り立っていくんでしょうね?
     もちろん精神的に支え合う関係は、普通の人間どうしでも同じことですけど、
     それでも生身の身体がないというのは、かなりの壁だと思います。


松風さん:まさにそのカミングアウトを、リックがアマンザに対してしているのが、
     第9話のバーのシーンですよね。
     だから、ただ単純に男女が良い雰囲気になりましたっていうよりも、
     ずっと深いシーンだなって思ったんです。

     この作品の世界観では、
     僕らエバートランサーは普通の人間から犯罪者とされる存在なんですよ。
     その象徴だったアマンザが、リックを受け入れるようになるというのも、深いですよね。

皆川さん:本当にそうですよね。

■小澤亜李さん&上田麗奈さんから、お2人への質問は? 
――キャスト対談の第2回で、ファルザ役の小澤亜李さんとアリス役の上田麗奈さんに、松風さんと皆川さんへ質問したいことを伺ってきたのですが。まずは上田麗奈さんから、「私はこの作品の打ち入りや中入りに参加できなかったので、今度ぜひお2人とご一緒したいので、好きなお酒を教えてください」とのことですが?

松風さん:作品とまったく関係ない質問をしてきましたね(笑)。

皆川さん:和食には日本酒、洋食にはワインと、お料理によって変えるのが好きですね。
     今度ご一緒しましょう、麗奈ちゃん、亜李ちゃん!


――松風さんはいかがですか?
松風さん:なんでも飲めるよっ(^o^)

皆川さん:唐突にカワイイ感じになりましたね(笑)。

松風さん:2人にアピールしておこうかと思いまして(笑)。今度ご一緒しましょう!

――続いては小澤亜李さんから松風さんへの質問で、「ファルザのように、自分の好きな動物がぜんぜん懐いてくれない時はどうしますか?」とのことです。
松風さん:自分の指をカプッと噛ませて、「大丈夫、怖くない」って説得します(笑)。

皆川さん:コラコラ!(笑)
     ファルザだったら指どころじゃなく、そのままやられますよね。


松風さん:リックがファルザに噛みつかれたら、金属音がハンパないですよね(笑)。
     でも僕は、動物に懐かれないってことはないですよ。

皆川さん:松風さんは常にオープンな感じがするから、動物のほうも近寄りやすいでしょうね。

松風さん:あとは、自分のほうから動物を追いかけていかずに、
     向こうが近寄って来るのをじっと待つとか、そういうコツを知っているので。
     懐かれないのは本当に、ファルザだけですよ(笑)。

――最後は上田さんと小澤さんのお2人から、「どうやったら皆川さんのようないい女になれるのでしょうか? オススメの女性らしいアイテムを教えてください」とのことです。
皆川さん:えっ! 何か私、そんなアイテムを現場で持ってましたっけ!?
     水筒ぐらいしか持ってなかったと思うんですけど……。
     クマの絵がついているかわいい水筒を、最近買って現場に持っていったら、
     松風さんに「その水筒は、幼稚園の時から使っているんですか?」って言われたんですよ。
     え~っ、難しい質問ですねぇ。


松風さん:彼女たちに足りないものを教えてあげたらいいんじゃないですか。
     彼女たちに足りないのはズバリ、セリフですよ。

皆川さん:たしかに(笑)。
     亜李ちゃんは「ふぁー!」で、麗奈ちゃんは「あはははは」でしたからね。

■SFならではの設定で、普遍的な問いかけを描いている作品です
――『ID-0』にはマインドトランスやミゲルジャンプといった、SFならではの設定がたくさん登場しますが、そのなかで特に驚いた設定はありますか?
松風さん:初期設定をもらった時に僕は、この作品はSFではあるんだけど、
     「人間とは何か」という、すごく普遍的なことを描いているんだ、と思ったんですね。

     リックやイドがエバートランサーだと知ったアマンザは、「お前たちは何なんだ、
     それでも人間だと言えるのか」みたいなことを言うんですけど、
     それに対してリックやイドは、
     「自分がここにいると思うからオレなんだ」という考え方なんです。
     そういった哲学的な問いかけを、SFと絡み合わせているところが、
     本当にスゴいなぁと思ったんですよ。
     身体がロボットのリックやイドが「自分は人間だ」と言う一方で、
     マヤは「流されてここに来た」と言い、
     アマンザは「軍隊の組織が自分の生きる場所だ」と言う。
     みんなが思っている自分というものは、実は他人に決められたものなんじゃないの?
     ってことですよね。そんな普遍的なところを突いてきているのが、
     この作品の魅力だと思います。

皆川さん:松風さん、カッコイイ! 私はもう、この世界観に圧倒されちゃって。
     よくこんな世界を考えましたねって。
     とにかく毎話、一キャラというより一視聴者として、ずっと驚き通しでした。


――キャスト対談の第1回で、皆川さんが完成した第1話をご覧になった直後に、「おもしろいよね!」と言いながらスタジオに入ってきたと話に出ていましたが。
皆川さん:そうなんですよ。
     とにかくおもしろくて、
     カーラ役の大原さやかさんやみんなと一緒に盛り上がっていました。
     単純に1人の視聴者として、
     たまらなくワクワクさせてくれるロボットアニメで、
     女性でも入りやすい作品だと思います。


松風さん:ロボットにしても、リックのスピードレースにしても、
     いろいろな設定をすごく細かく作っているのに、
     そこに焦点が当たるんじゃなくて、
     物語がおもしろいという方向に、ちゃんとシフトしているんですよね。

皆川さん:1人1人のキャラクターに、ちゃんとドラマがありますから。

松風さん:全員のバックボーンがすごくおもしろいんですよ。
     ファルザがああなる前の元の動物の話だとか、
     グレイマンが軍隊で部下を大勢死なせている話とか。
     だから、この作品を皆さんに気に入ってもらえたら、
     ぜひスピンオフをやってみたいですね。

――オンエアも残り3話となりましたが、これからクライマックスに向けて、視聴者の皆さんにメッセージをお願いします。 松風さん:物語もいよいよ佳境になって参りました。
     僕らは全12話をあっという間に録り終えているんですけど、
     この物語と世界観はまだまだ無限に広がると思っています。
     最終話まで楽しんでいただいて、もし気に入ってもらえたら、
     ぜひその声を他の皆さんにも伝えていただいて、
     続編やスピンオフでさらにこの世界を楽しんでもらえるように
     なればいいなと、僕は思っています。引き続き応援をよろしくお願いします!

皆川さん:今までロボット物に興味がなかった人も、
     この作品は入りやすく観ることができると思います。
     絶対に引き込まれる世界観ですので、
     もしまだ観ていなかったら、今からでも観てください。
     ずっと観続けてくださっている方は、残り3話ということで、
     ここからさらにググッとおもしろさがパワーアップしますので、
     最後まで応援をよろしくお願いします!


――ありがとうございました。